結論他社の取り組みをそのままなぞって課題を設定すると、自社の状況とズレた施策が実行され、成果が出ません。ベンチマークは有効ですが、課題設定の根拠を外部に置いた瞬間、思考は止まります。このパターンの典型例次のような言葉が課題設定の起点になっている場合、このパターンに当てはまります。競合がDXを進めている同業他社がAIを導入している業界的に遅れていると言われているそして課題が、次のように定義されます。「他社に比べてDXが遅れている」「業界標準に追いついていない」一見、冷静な分析に見えますが、自社固有の課題は、ほとんど語られていません。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、「比較」を「課題」にすり替えていることです。他社と違うこと業界平均とズレていることそれ自体は、問題でも課題でもありません。重要なのは、その違いが、どんな不都合を生んでいるのかです。なぜこの課題設定ではうまくいかないのか① 比較対象が恣意的になる他社比較は、多くの場合、表に出ている成功事例声の大きい企業都合の良い事例だけを見て行われます。その結果、自社とは前提条件がまったく異なる企業を、無意識に基準にしてしまいます。② 自社の強み・制約が無視される他社と同じことをやろうとすると、人材構成顧客特性事業モデルといった、自社の前提条件が後回しになります。結果として、「できなくはないが、無理がある施策」が選ばれます。③ なぜやるのかが説明できない「なぜこの取り組みをやるのか?」という問いに対し、他社がやっているから業界的に必要だからとしか答えられない状態になります。この状態では、現場も納得せず、推進力が生まれません。本来設定すべき「問い」他社の動きを見たとき、本来問うべきなのは次の点です。他社は、どんな課題を解こうとしているのかその課題は、自社にも存在しているのか自社の構造に照らすと、同じ打ち手が適切か課題設定の言い換え例× 競合がAIを導入している〇 問い合わせ対応の初動判断が属人化しており、対応品質にばらつきがある× 業界的にDXが進んでいる〇 受注から請求までのリードタイムが長く、キャッシュフローに影響しているこのパターンに陥っているかのチェック次の項目に心当たりがあれば注意が必要です。課題の説明に「他社」「業界」という言葉が多い自社データより、外部事例が議論の中心になっている施策の背景が、比較の話で終わっている他社事例は「答え」ではなく「材料」他社事例は有用です。しかし、それは課題設定の答えではありません。自社の状況を理解するための材料発想を広げるためのヒントとして使うべきものです。課題設定は「内側から外を見る」作業課題設定の起点は、常に自社の中にあります。どこで困っているのか何が滞っているのか何がボトルネックなのかこれを整理したうえで、初めて他社事例が意味を持ちます。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、他社事例をそのまま当てはめない自社の構造を言語化する比較は「確認」に使うというスタンスを取っています。「周りがやっているから」という理由で進めている取り組みがある場合、一度立ち止まり、自社にとっての必然性を問い直すことが重要です。本記事は、「課題設定とは何か」という考え方を前提に、その具体的な誤りパターンを扱っています。課題設定の全体像については、こちらの記事をご覧ください。参考:課題設定とは何か?