結論「DXを推進する」という表現を課題として置いた瞬間、何を変えるのか、何を優先するのか、誰が何をするのかが決められなくなります。これは意欲や姿勢の問題ではなく、問いが抽象的すぎることによる構造的な問題です。このパターンの典型例次のような課題設定は、多くの企業で見られます。DXを推進するデジタル化を加速するデータ活用を強化する一見すると前向きで、否定しづらい言葉ですが、これらは課題ではなくスローガンです。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、「方向性」と「課題」を混同していることです。DXは方向性推進は意思表示であって、何に困っているのか、何がうまくいっていないのかを示してはいません。なぜこの課題設定ではうまくいかないのか① 優先順位が決められない「DXを推進する」という言葉からは、どの業務をどの順番でどのレベルまで変えるのかが読み取れません。結果として、できることから手を付ける各部門がバラバラに動くという状態になります。② 成果の定義ができないスローガン型の課題設定では、何ができれば成功なのかどの指標が改善すればよいのかが定義できません。そのため、成果検証ができない改善につながらないという状態に陥ります。③ 解釈が人によって変わる「DXを推進する」という言葉は、IT部門にとってはツール導入現場にとっては業務効率化経営にとっては経営改革と、立場によって意味が変わります。結果として、同じ言葉を使いながら、別々のことをやっている状態が生まれます。本来設定すべき「問い」スローガンを課題にしてしまった場合、問いは次のように分解する必要があります。どの業務・意思決定が、今うまく回っていないのかその結果、どんな不都合が生じているのか改善された状態とは、具体的にどんな状態か課題設定の言い換え例× DXを推進する〇 月次の業績把握に時間がかかり、意思決定が遅れている× データ活用を強化する〇 顧客別の収益性が把握できず、価格判断が属人的になっているこのパターンに陥っているかのチェック次の項目に心当たりがあれば注意が必要です。課題がスローガン的な言葉で表現されている具体的な業務や指標の話になると議論が止まる「まずはDX推進から」という言葉で話が締められる課題設定は「言葉を削る作業」良い課題設定とは、言葉を足すことではなく、削ることです。抽象的な言葉を削り具体的な不都合を残すことで、初めて行動が決まります。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、スローガンを課題として扱わない現象と構造を言語化する行動につながる問いに落とすことを重視しています。「DXを推進しよう」という言葉で動けなくなっている場合、必要なのは推進力ではなく、問いの具体化かもしれません。本記事は、「課題設定とは何か」という考え方を前提に、その具体的な誤りパターンを扱っています。課題設定の全体像については、こちらの記事をご覧ください。参考:課題設定とは何か?