結論課題設定とは、「何を解くべきかを決めること」ではありません。「何を解かなくてよいかを捨てること」です。課題設定の巧拙は、その後に選ばれる施策・ツール・体制のすべてを事前に決めてしまいます。課題とは何か多くの場合、「課題」という言葉は次のように使われます。取り組むべきテーマ解決したい問題やるべきことのリストしかし、これらは課題の定義としては不十分です。課題とは「現状と、目指す状態のあいだにある“構造的なズレ”」です。単なる不満や症状ではない施策や解決策そのものでもないこのズレを正しく捉えられていないと、どれだけ頑張っても、打ち手は噛み合いません。なぜ課題設定は軽視されがちなのか課題設定が飛ばされやすい理由は、意欲や能力の問題ではありません。構造的な理由があります。① 早く「答え」を出したくなるツールを入れる施策を打つ改革を始める行動すること自体が評価されやすいため、問いを立てる時間が「無駄」に見えてしまいます。② 課題と施策が混同されやすい次のような言葉は、課題のように見えて、実は施策です。DXを推進するAIを活用する営業力を強化するこれらは「やりたいこと」であって、「なぜそれが必要か」を説明していません。③ 現象が強すぎる売上が落ちている人が辞めている業務が回っていないこうした現象は分かりやすいため、現象そのものを課題としてしまいがちです。しかし、現象は結果であって、原因ではありません。課題設定を誤ると、何が起きるのか課題設定を誤ると、次のような状態が起きます。解決策が先に決まる他社事例をそのまま真似る抽象的なスローガンだけが残る現場が疲弊するこれらは偶然ではなく、課題設定の誤りが生む典型的な帰結です。(※ これらの具体像は、DXにおける誤った課題設定パターン集で詳しく整理しています)参考:なぜ「現象」から課題を決めると、会社は疲弊するのか?参考:なぜDXは「ツール導入」で止まってしまうのか?正しい課題設定とは何をしているのか正しい課題設定では、次のことを行っています。① 現象を分解しているどこでどのプロセスで何が起きているのかを、感覚ではなく構造として捉えます。② 「困っている状態」を言語化している何ができないのか何に時間がかかっているのか何が属人化しているのか不都合を具体的な言葉に落とします。③ 問いとして定義している良い課題設定は、解決策ではなく「問い」の形をしています。なぜ〇〇ができていないのかどこにボトルネックがあるのか何が変われば、状況は改善するのか課題設定は「選択肢を狭める作業」課題設定の目的は、選択肢を増やすことではありません。後工程で迷わないために、検討すべき選択肢を意図的に狭めることです。やらなくてよいことを捨てる今は考えなくてよいことを切り分けるこれができて初めて、施策やツールの選択が意味を持ちます。課題設定とDXの関係DXは、課題設定の良し悪しが最も分かりやすく結果に出る領域です。解決策が豊富他社事例が多いトレンドに引っ張られやすいだからこそ、DXは「課題設定の教材」として非常に分かりやすいのです。本サイトでは、DXを入口にしながら、本質的には「課題設定そのもの」を扱っています。参考:なぜ「解決策ありき」で考えると、DXは空回りするのか?参考:なぜ「他社がやっているから」という理由では、DXは成果が出ないのか?参考:なぜ「DXを推進する」という言葉は、何も決められないのか?課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、課題を「正解」として提示しない状況を整理し、構造を言語化する経営や現場が判断できる問いを残すことを重視しています。答えを出す前に、問いを正しく置くこと。それが、遠回りに見えて、最も確実な近道です。本記事は、課題設定の考え方を整理した原典です。この考え方が、実務でどのような誤りを生むのかについては、以下の記事で具体的に整理しています。参考:なぜ「現象」から課題を決めると、会社は疲弊するのか?参考:なぜDXは「ツール導入」で止まってしまうのか?(入口・総論)参考:なぜ「解決策ありき」で考えると、DXは空回りするのか?参考:なぜ「他社がやっているから」という理由では、DXは成果が出ないのか?参考:なぜ「DXを推進する」という言葉は、何も決められないのか?