結論新規事業を「面白いアイデアを出すこと」から始めると、議論は盛り上がる一方で、事業として前に進まなくなります。原因は発想力や創造性の不足ではありません。課題を定義しないまま、解決策(アイデア)を先に出してしまう課題設定の順序ミスです。よくある状況新規事業の検討が始まると、次のような光景がよく見られます。まずはアイデアを出しましょうブレストで幅広く考えましょう既存事業にとらわれず自由にワークショップが開かれ、数十個のアイデアが並ぶポストイットが壁一面に貼られる「これは面白い」「それは弱い」と評価が始まるしかし、数週間後にはこうなります。結局どれをやるのか決まらない検証に進めないいつの間にか立ち消えになるなぜ「アイデア出し」から始まりやすいのか① 新規事業=アイデアだと思われやすい新規事業という言葉から、新しい斬新今までにないといったイメージが先行し、課題よりも発想が重視されやすくなります。② 議論がしやすく、場が盛り上がるアイデア出しは、誰でも参加できる正解がない否定されにくいため、短時間で活気が出ます。その結果、「進んだ感」が生まれます。③ 本当の難所を後回しにできる新規事業の難しさは、誰のどんな課題を解くのかそれは本当に困っているのか既存事業とどう違うのかを言語化することにあります。アイデア出しは、この重たい問いを後回しにできる“安全地帯”になります。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、「アイデア」と「課題」を混同していることです。アイデアは解決策課題は「なぜそれが必要か」課題が定義されていない状態では、どんなに良さそうなアイデアも評価できません。なぜうまくいかないのか① 評価基準が定まらない課題がないため、面白いかどうか新しいかどうか経営の好みといった主観的な基準で選別されます。結果として、意思決定ができません。② 検証が始められない誰に何をなぜ検証するのかが曖昧なため、仮説検証の設計ができません。③ 既存事業との関係が整理できないカニバリするのかシナジーがあるのか別会社にすべきかといった議論が発散します。会議で起きがちなズレた会話このパターンでは、会議がこう進みます。「もっと尖らせましょう」「それ、うちじゃなくてもできるのでは?」「もう少し考えましょう」一方で、次の問いは置かれません。誰が何に困っているのか今の代替手段は何かなぜ今、それをやる必要があるのか本来設定すべき問い新規事業では、アイデアの前に次の問いを置く必要があります。① 誰の、どんな不都合を解くのか?困っているのは誰か何ができなくて困っているのか② その不都合は、なぜ放置されているのか?既存の解決策は何かなぜ十分でないのか③ 解決されたら、何が変わるのか?行動がどう変わるのか判断がどう楽になるのか課題設定の言い換え例× 新しいアイデアを出す〇 特定の業務で判断に時間がかかり、機会損失が起きている× 面白いサービスを考える〇 既存サービスでは対応できない不便が残っている× 新規事業を立ち上げる〇 顧客が我慢している非効率が解消されていない正しい課題設定に置き直すと、何が変わるか課題が明確になると、アイデアは自然に絞られる検証すべき仮説が見える「やらない理由」も明確になる結果として、新規事業は発想大会から仮説検証のプロセスに変わります。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、新規事業において次を重視します。アイデアを出発点にしない先に「困っている状態」を具体化する解決後の変化を言葉にするアイデアは課題の結果として生まれるものと捉える新規事業が止まっているとき、必要なのは追加のアイデアではなく、問いの置き直しです。