結論他社の成功事例をそのまま真似して新規事業を始めても、期待した成長は起きず、検証が長期化して止まることが多くあります。原因は実行力やスピードの問題ではありません。他社事例を「答え」として扱ってしまう課題設定の誤りです。よくある状況新規事業の検討で、次のような言葉が出てきます。このビジネスモデルは他社で成功している今、同じ領域で伸びている会社がある後発でも横展開すればいけるはずだそして議論は、事業モデルの模倣価格帯の踏襲提供機能の横並びへと進みます。一見、失敗しにくい判断に見えますが、実行段階で違和感が表面化します。なぜ「他社事例」に引っ張られやすいのか① 成功が証明されているように見える他社事例は、すでに売上が立っている投資を集めているという事実があるため、検証を省略してもよいような錯覚を生みます。② 社内説明がしやすい「他社もやっている」「市場はある」という理由は、稟議投資判断上層説明を通しやすくします。結果として、課題の深掘りが省かれます。③ 自社の不確実性から目を逸らせる新規事業の難しさは、自社にその強みがあるのかその市場で勝てるのかという不確実性に向き合うことです。他社事例は、その不安を一時的に和らげます。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、他社が解いている課題と、自社が解くべき課題を混同していることです。他社の成功は、その会社の資産その顧客基盤その参入タイミングと強く結びついています。同じ事業モデルでも、自社が直面する課題は別物です。なぜうまくいかないのか① 顧客の反応が鈍い他社では評価された価値が、自社顧客には刺さらない課題として認識されていないということが起きます。② 差別化ができない模倣から始まるため、なぜ自社が選ばれるのかなぜ後発なのに勝てるのかを説明できません。③ 検証が迷走する成果が出ないと、価格を下げる機能を足すマーケを変えると打ち手が場当たり的になります。学習が積み上がりません。会議で起きがちなズレた会話このパターンでは、会議がこう進みます。「他社はこのやり方で伸びています」「まだ浸透していないだけです」「もう少し続けてみましょう」一方で、次の問いは置かれません。自社の顧客は何に困っているのかなぜ既存手段では足りないのか自社がやる意味は何か本来設定すべき問い他社事例を見るとき、新規事業では次の問いを立てる必要があります。① 他社は、どんな課題を解いているのか?誰のどんな不都合を② その課題は、自社にとっても優先度が高いのか?同じ顧客層か同じ切実さか③ 自社が解くとしたら、どこを変えられるのか?提供価値提供方法参入切り口課題設定の言い換え例× 他社の成功モデルを真似る〇 自社顧客では、同様の不便が解消されていない× 市場で伸びている事業に参入する〇 特定の顧客層で、未解決の不都合が残っている× 後発でも横展開する〇 既存プレイヤーが拾えていないニーズがある正しい課題設定に置き直すと、何が変わるか課題が明確になると、他社事例の使い方が変わります。事例は「答え」ではなく「材料」になる自社が勝てる切り口を考えられる検証が一点に集中する結果として、新規事業は模倣から独自仮説の検証に変わります。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、新規事業において次を重視します。他社事例をそのまま答えにしない先に「誰のどんな不都合か」を特定する自社がやる意味を言語化する事例は仮説検証の材料として使う新規事業が事例探しで止まっているとき、必要なのは新しい成功例ではなく、課題設定の起点を正すことです。