結論「新規事業を創出する」という言葉を課題として置いた瞬間、誰が、何に向き合い、どこまでやるのかが曖昧になり、行動が止まります。これは熱意や覚悟の問題ではありません。課題がスローガン化していることが原因です。よくある状況中期計画や経営方針の中で、次のような言葉が掲げられます。新規事業を創出する第二の柱を作る成長エンジンを確立する方向性としては正しく、誰も反対しません。しかし、現場に落とす段階で次のような混乱が起きます。何をもって新規事業なのか分からない既存事業の改善との違いが曖昧どこまでやれば成功なのか定義されていない結果として、検討だけが続き、実行に移らない状態になります。なぜ「新規事業創出」という言葉に逃げてしまうのか① 包括的で前向きな言葉だから「新規事業創出」は、未来志向成長戦略攻めの姿勢を感じさせる言葉です。その分、具体化を後回しにできてしまいます。② 誰も反対しない「新規事業をやらない」という判断は、消極的に見られがちです。そのため、この言葉は合意を取りやすい安全な表現になります。③ 本当の制約に触れずに済む具体化すると、投資余力人材の確保既存事業との優先順位といった、避けられない制約が見えてきます。「新規事業創出」という言葉は、それらを一時的に覆い隠します。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、目的(ありたい姿)と課題(今、困っていること)を混同していることです。新規事業創出は「目的」課題は「なぜ今、それが必要なのか」目的だけを掲げても、具体的な行動は決まりません。なぜうまくいかないのか① 成功の定義が曖昧売上が立てば成功なのか検証できれば成功なのか子会社化すれば成功なのか判断基準がなく、進捗を評価できません。② 優先順位が決まらない既存事業と新規事業の間で、人時間予算の配分が決まらず、どちらも中途半端になります。③ 責任の所在が不明確誰が意思決定するのか誰が撤退を判断するのかが曖昧なまま、プロジェクトが宙に浮きます。会議で起きがちな空回りこのパターンでは、会議がこうなります。「新規事業のアイデアを出しましょう」「もう少し幅広く考えましょう」「引き続き検討を進めます」前向きな言葉だけが並び、何も決まらないまま時間が過ぎます。本来設定すべき問い「新規事業を創出したい」と感じたとき、問いは次のように具体化する必要があります。① なぜ今、新規事業が必要なのか?既存事業のどこに限界があるのか何がリスクになっているのか② どの前提を変えたいのか?顧客層か提供価値か収益モデルか③ どこまで進めば十分なのか?仮説検証完了か初期売上かスピンアウトか課題設定の言い換え例× 新規事業を創出する〇 既存事業では対応できない顧客ニーズが増えている× 第二の柱を作る〇 特定市場への依存度が高く、リスクが集中している× 成長エンジンを確立する〇 中長期で収益が伸びる領域が見えていない正しい課題設定に置き直すと、何が変わるか課題が具体化されると、新規事業の役割が明確になる進め方と撤退条件が定まる既存事業との関係を整理できる結果として、新規事業はスローガンから意思決定の連続に変わります。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、新規事業において次を重視します。スローガンを課題として扱わない「なぜ今見る必要があるか」を言語化する成功と撤退の基準を先に決める新規事業を経営判断のプロセスとして設計する新規事業が動かないとき、必要なのは新しい掛け声ではなく、問いの具体化です。