結論人事・組織の問題を「人が足りない」という言葉から考え始めると、採用をしても状況は改善せず、現場の負荷だけが増え続けることが多く起きます。原因は採用力や母集団形成の問題ではありません。本来の詰まりを特定しないまま、人数という結果を課題にしてしまう課題設定の誤りです。よくある状況現場から、次のような声が上がります。人手が足りないこれ以上仕事を回せない忙しすぎて育成ができないそれを受けて、人事・経営の議論はこう進みます。採用人数を増やそう即戦力を採ろう派遣や業務委託も使おう採用活動は活発になりますが、数ヶ月後には次の状態になります。人は増えたが、忙しさは変わらない教える側の負担が増えた期待した戦力化が進まないなぜ「人が足りない」から始まりやすいのか① 現場の実感として正しいから忙しい現場にとって、「人が足りない」は事実です。否定しづらく、議論が止まりやすい言葉でもあります。② 採用は分かりやすい打ち手だから採用は、数値化できる行動に落としやすい前進している感が出るため、課題として扱いやすくなります。③ 構造の話を避けられる人手不足を深掘りすると、業務設計役割分担権限や判断の集中といった、組織構造の問題に踏み込む必要があります。「人が足りない」は、それらを一旦脇に置くための便利な言葉になります。誤りの本質このパターンの本質的な誤りは、負荷が高い理由と、人数不足を混同していることです。人が足りないのか仕事のやり方が詰まっているのか判断が特定の人に集中しているのかを切り分けないまま、採用に進んでしまいます。なぜうまくいかないのか① ボトルネックが解消されない仕事が回らない原因が、特定工程の属人化判断待ち例外処理の多さにある場合、人を増やしても解消されません。② 教育コストが想定以上にかかる構造が整理されていない組織では、教える内容が人によって違う判断基準が共有されていないため、新人育成が進みません。③ 組織が複雑になる人が増えることで、調整業務コミュニケーション管理負荷が増え、かえって生産性が下がります。会議で起きがちなズレた会話このパターンでは、会議がこうなります。「まずは人を増やしましょう」「忙しいのだから分かります」「採用できれば解決します」一方で、次の問いは置かれません。どこで仕事が詰まっているのかなぜ特定の人に集中しているのか何ができれば、負荷は下がるのか本来設定すべき問い人手不足を感じたとき、人事・組織では次の問いを置く必要があります。① どの業務で負荷が集中しているのか?定常業務か例外対応か判断業務か② なぜその人しかできないのか?権限の問題か情報の問題かルールの問題か③ 人を増やさなくても解消できる余地はないか?業務整理権限移譲役割再設計課題設定の言い換え例× 人が足りない〇 判断業務が特定の管理職に集中し、処理が滞っている× 採用を強化する〇 業務が属人化しており、引き継ぎができない× 即戦力を採る〇 標準業務と例外業務の切り分けができていない正しい課題設定に置き直すと、何が変わるか課題が具体化されると、人を増やす前にやるべきことが見える採用要件が明確になる育成の設計が可能になる結果として、人事施策は人数調整から組織設計の話に変わります。課題デザイン室の考え方課題デザイン室では、人事・組織において次を重視します。「人が足りない」をそのまま課題にしない負荷の正体を業務構造として捉える人を増やす前に、役割と判断を整理する採用は構造設計の結果として行う人手不足に悩んでいるとき、必要なのは追加採用ではなく、問いの置き直しです。